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122.痩せた歯茎に対する「歯肉の移植手術」
今回は前回と同じように同窓会で発表させていただいた内容に関してです。痩せた歯茎に対する「歯肉の移植手術」をご紹介します。
「右上の歯茎が痩せてきた」という主訴で来院されました。
下写真です。点線部分より歯茎が痩せています。歯と歯の間の骨吸収が無ければ、一度痩せた歯茎を再び歯に被せることができるといわれています。
下図がミラーの分類です。
Class1,2は歯と歯の間の骨吸収がなく、Class3、4は歯と歯の間の骨吸収があります。Class1,2は根面被覆(歯茎を再び被せること)の成功率は高いとされています。
今回の症例はミラーのClass1になります。また、歯肉退縮(歯茎が痩せること)が起きやすい分類としてMaynardの分類(下図)があります。
この分類は、骨も歯肉も薄いType4では歯肉退縮が起きやすいとしています。
今回の症例はLanger&Langer法(下図)にて根面被覆を行いました。
以下症例写真です。矢印にしたがって手術を行って行きました。切開し、歯肉を剥離・翻転してそこに口蓋より結合組織を採取し移植しました。
下写真が1ヶ月後です。今のところ1ヶ月後の予後しか追うことができていませんが良好に経過しています。周囲歯肉の厚みがあるために良好に経過しているものと考えられます。
歯列から飛び出している歯に関しては根面被覆はなかなか難しいです。また、炎症がある場合は行えませんので、ブラッシングで炎症のコントロールを行ってからになります。
歯茎の痩せが気になる方はご相談ください☆
渡辺歯科医院
日本歯周病学会 歯周病専門医
121.歯茎が下がってきたら要チェック!歯科医が教える「歯磨きテク」3つ
歯肉退縮(歯茎の痩せ)の記事が坂本正敬さんの取材で小学館ウーリスに紹介されました。
是非、ご覧になってください。以下URLです。
歯茎が下がってきたら要チェック!歯科医が教える「歯磨きテク」3つ
渡辺歯科医院
日本歯周病学会 歯周病専門医
120.移植した歯肉の運命は?
前々回、角化歯肉が重要であるというテーマのブログでした。
その角化歯肉を獲得する方法で最も確実な方法は遊離歯肉移植術になると思います。今回のブログは、その移植した歯肉がどのようにして治癒するのかというテーマです。以下遊離歯肉移植術の写真です。
Lindhe先生の臨床歯周病学とインプラントを改変して説明します。Lindhe先生は遊離歯肉移植術の治癒を3つのステージに分けています。
①初期(0~3日)initial phase
移植片と移植床との間に、移植床からの血管を介さない“血漿循環plasmatic circulation”により生活状態を保つと説明しています。下図解しています。
②血管再生期(2~11日)revascularization phase
治癒の4~5日後、移植床と移植片の血管吻合が確立。移植した組織に血管循環が確立します。
③組織成熟期(11~42日)tissue maturation phase
この期間中、移植組織中の血管の数は徐々に減少しはじめ、約14日後には移植片の血管系は正常に戻る。また上皮は、この治癒過程の間に徐々に成熟すると解説しています。
この手術後は、コーパックというガムのようなもので手術部位をカバーします。そのため、食物などによる機械的刺激が加わらないようにします。また、1週間後に抜糸を行います。コーパックさえ外れなければ(特に初期の0~3日が重要)痛みもさほどありません。3週間くらいすると普通にブラッシングも行うことができます。この手術も保険適応です。3回目の歯周病検査以降に行うことが可能です。
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院
119.永久歯が生えない子もいるの!? 歯科医師が教える「乳歯を徹底ケアすべき」理由
小学館Blogサイト、「ウーリス」に取材をうけた内容が掲載されました。
是非、チェックなさってください。
記事:坂本正敬さん
永久歯が生えない子もいるの!? 歯科医師が教える「乳歯を徹底ケアすべき」理由
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院
118.角化歯肉(付着歯肉)の重要性
5/29に神奈川歯科大学同窓会富山県支部にて歯周病について発表させていただきました。その内容を数回に渡ってご紹介いたします。
「付着歯肉は必要か?」というタイトルです。
少し難しい話になります。このブログにてよく登場する「動かない歯茎」と「動く歯茎」についてのお話です。「動かない歯茎」のことを「付着歯肉」といいます。
歯の周囲には「動かない歯茎」が必要最低限あった方が、歯周組織は安定しやすいことが多いと私は考えています。
左下写真をヨードで染色すると右下写真になります。
色が淡い部分と濃い部分に分けられます。
淡い部分が角化歯肉、濃い部分が歯槽粘膜といいます。
それぞれの特徴は、角化歯肉は上皮部分に角質層を有し、歯槽粘膜は上皮部分に角質層がありません。
上皮下の結合組織(上皮の下にある土台となる組織)は、角化歯肉はコラーゲン線維を有した緻密な結合組織、歯槽粘膜は弾性線維を有した疎性結合組織になります。簡単にいえば、角化歯肉は表層が硬く動かない、歯槽粘膜は表層が硬くなく動くという特徴があります。
現在角化歯肉の有無による影響について見解が分かれており、必要または不必要で様々な諸説があります。
1972年に発表されたLang and Löeの論文では、2mmの角化歯肉(そのうち1ミリの付着歯肉)が存在すれば、歯周組織の80%は健康が維持されたと報告しました。
The relationship between the width of keratinized gingiva and gingival health.
J Periodontol. 1972 Oct;43(10):623-7.
角化歯肉(付着歯肉)が無くても歯周組織の健康が維持される場合もありますが、角化歯肉が必要最低限あった方が有利な場面も多いのです。
症例です。
下の写真をご覧ください。
①が側面。②が咬合面です。そして③がヨードで染色した状態となります。オレンジの点線が動かない歯茎と動く歯茎の境界線になります。
下写真の枠で囲んだ部分に角化歯肉を移植する計画としました。
歯がない部分より角化歯肉を採取して移植した様子です。
術前術後の比較写真です。
下写真です。点線の部分が動かない歯茎と動く歯茎の境界線になりますので、術前と術後で比較すると「動かない歯茎」を増やすことが出来ました。
この症例では、歯と歯の間(左上7近心)に深い歯周ポケットが存在したため、どうしても角化歯肉を獲得する必要がありました。少し難しい話ですが、歯周ポケットを減らすためには(一度歯周病で剥がれた歯茎を再付着させるためには)角化歯肉がどうしても必要になる場合があります。
このケースでは、遊離歯肉移植術を行い角化歯肉を得た後に、フラップ手術を行って歯周ポケットの改善を図りました。
歯周外科療法後、ブリッジを装着してもブリッジ周囲に動かない歯茎が十分にあるために術後のブラッシング(歯ブラシと歯間ブラシ)も行いやすい状態になっています。
こんな論文もあります。
James E. Kennedyらが発表した論文です。遊離歯肉移植術を行ったグループと行わなかったグループで、6年後に歯周組織の状態を評価しています。メインテナンスにきちんと患者さんが来られる場合は、どちらも問題はなかったが、メインテナンスに来られなくなったグループでは遊離歯肉移植術を行わなかったグループで有意に歯肉退縮(歯茎の痩せ)が見られたと報告しています。
A longitudinal evaluation of varying widths of attached gingiva
J Clin Periodontol. 1985 Sep;12(8):667-75.
角化歯肉は「無いよりはあったほうが安心」といえるかもしれません。いつも考えることですが、今は良くても高齢になると歯間ブラシや歯ブラシによるブラッシングも困難になります。出来るだけ有利な状況を早いうちに作れるものであれば作った方がメインテナンスも行いやすいし、トラブルが起きた時の対応も簡単に済みます。
当医院は祖父の代から父、私と3代に亘って歯科医です。そのさらに先代は内科・産婦人科だったそうです。私が現在、診療させていただいている患者さんには、「ここで産まれた」という方もいらっしゃいます。要は、4代に亘って1人の患者さんの健康を管理させていただいているわけです。言い換えれば、1人の歯科医師がその患者さんの人生に関われる時間は短いのです。到底、その患者さんの一生を一人で診察することはできません。
例えば、インプラント治療について考えます。インプラント治療は私は現在40歳ですから、25歳の患者さんにインプラント治療を行った場合、私がメインテナンスできるのは私が現役で75歳まで歯科医でいられたとしても(現在父親は69歳でまだ現役で入れ歯担当してくれています)、その患者さんの60歳までしか診療できません。そのあとは、他の先生にお願いすることになります。
インプラントはメーカーも数多くあり、医院によって使用するメーカーが違いますのでメインテナンスも他メーカーのインプラントを使用されている場合は困難です。ですから、インプラント治療は予後をどのくらい追えるかが重要となると考えています。当然、歯周病が進行している患者さんも、歯周病がある程度治ってからでなければインプラント治療は行えません。それは、インプラントも歯周病菌に感染するからなのです。
私は、インプラント希望の患者さんでもブラッシングを適切に行えない方、または行っていただけない方はインプラントをお断りして、できるだけ入れ歯(ブリッジが行えれば、ブリッジが第一選択。)を勧めます。結局、インプラントも細菌感染してしまっては、後から余計に治療が大変になってしまうからです。患者さんも高額な治療費を払って、さらに噛めなくなることも考えられます。
歯科治療は、出来るだけメインテナンスしやすい環境を早めに整えておくことと、将来を見据えた治療計画をLife Styleにあわせて計画をたてることが重要であると考えています。
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院
117.メインテナンスの重要性!
小学館ブログサイト、坂本正敬さんの取材で記事になりました。
以下、リンクします。
知らない間にリスク4倍!? 歯科医が教える「歯科検診」の重要性とは
記事のように歯周病治療の鍵は動的治療後のメインテナンスにあると考えています。深い歯周ポケットが改善したとします。でも、それは「治癒」ではなく、「病状安定」と考えます。油断すると、また歯周ポケットが再発してしまうからです。「治った!もう歯医者は終わり!」と考えることが危険なのです。
当院では、歯周病治療を分りやすく理解していただくために、患者さんに配布する資料(下図)も作成しました。「検査」「診断」「歯茎より上の見えている部分の除菌=8割は患者さんの仕事」「歯茎の中の見えない部分の除菌=10割が歯科医院の仕事」「歯周外科療法」「メインテナンス」と6ステージに分かれています。
患者さんによっては、「歯ブラシ指導ばかりで治療が進まない」と言われる方もいらっしゃいます。まずは痛みをとる、腫れを引かせるなどの緊急な症状の改善を行うことは重要です。
しかしながら、歯周病にしても虫歯にしても原因は「プラーク」=「細菌の塊」なのです。どんなに歯周病治療を進めても、どんなに削って被せても、そこに多量のプラークが付着していては歯周病は治らないし直ぐに虫歯になってしまうでしょう。
患者さんにはプラークコントロールの重要性を理解していただけるように今後とも努力していきます。
渡辺歯科医院
日本歯周病学会 歯周病専門医
116.「動く歯茎」を「動かない歯茎」へ!
このブログによく登場する「動く歯茎」と「動かない歯茎」の話です。歯の周りには「動かない歯茎」が十分あった方が、歯周病治療をおこなっていく上で有利なことが多いと考えています。
今回は、ブリッジを入れる前に歯の周囲に「動かない歯茎」を移動する手術を行いました。
下写真のオレンジ線は、「動く歯茎」と「動かない歯茎」の境界線です。「動かない歯茎」が無く、「動く歯茎」が歯の周りを覆っています。
そこで、下写真のように青線部分の「動かない歯茎」を、緑線部分へ移動して歯の周囲(頬側)に「動かない歯茎」を形成する計画としました。
移動が終了して縫合後の写真です。移動した部分にはテルダーミスという創傷治癒材を移植しています。
歯の周囲に「動かない歯茎」が3mm程度形成されました。
「動く歯茎」と「動かない歯茎」の必要論は論文によっても賛否両論ですが、①「動かない歯茎」がどうしても必要な場合があること、②「動かない歯茎」があることでブラッシングが行いやすく歯周組織が安定しメインテナンスを行いやすくなると考えています。
この手術は有茎歯肉移植術といいます。手術は15分くらいで完了しています。簡単な外科治療を行うことで「歯を長持ちさせる」ことが出来ればそんなに大変なことではないと考えています。
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院
115.歯周病を増悪する頬小帯
今回は頬小帯切除術のご紹介となります。
電話でのお問い合わせで、ブログに紹介している手術は他の大きな病院で行うのかと聞かれますが、全て当院で行っています。腫瘍や骨折など大きな手術は行えませんが、歯周外科療法、歯の移植手術、インプラントなどは当院で十分行うことが可能です。
下写真をご覧ください。仮歯を装着している部分の歯茎ですが、頬小帯というスジがあり、歯周ポケットを深くしている上に、被せ物(金属冠)の型も採りにくい状態となっています。
そこで、まずその頬小帯を下方に移動させ縫合させました。(下写真)
創面が露出した部分に「テルダーミス」というコラーゲンが材料を移植しました(下写真)。いつもは、上顎から遊離歯肉を移植するのですが、今回は手術部位を1ヶ所にしたいためコラーゲンを利用しました。遊離歯肉移植を行うよりは付着歯肉幅は得られないことが考えられますが、手術部位が1ヶ所のため簡易的に行うことが出来ます。
術後2週間です(下写真)。頬小帯が下方に移動することができ、経過良好です。
まだ仮歯のままで経過観察が必要ですが、術後1ヶ月を目安に歯肉の状態が安定した後に型採りを行う予定です。小帯が切除できたことで、ブラッシングも行いやすくなりました。
この手術もそうですが、ほとんどの歯周外科は保険診療で行うことが可能です。またご相談ください。
日本歯周病学会・歯周病専門医
渡辺歯科医院
114.前歯と奥歯の歯周ポケットは危険度が違う!
今回は前歯と奥歯の歯周ポケットの危険度の違いの説明になります。
歯周ポケット検査の模式図です。プロービングデプス(歯と歯肉の境目の隙間深さ)5mm以上あると危険といえます。
このプローブ(下写真)で測定します。1mm毎にメモリが付いていて5mm毎に太いメモリになっています。
前歯で5mmの深さがある場合です。
次に奥歯で5mmの深さがある場合です。奥歯では5mm以上歯周ポケットが形成されている場合、根と根の間まで歯周病が感染していることが多いのです。この根と根の間を「根分岐部」といい、ここまで歯周病が進行した場合は「根分岐部病変」といいます。
前歯は1本しか根がありませんが、下写真のように上顎の奥歯では根が3本、下顎の奥歯では根が2本あります。一度歯周病に感染すると、奥歯では根が複数ありますので、細菌の除去、歯と歯肉の再付着が達成しにくいため治りにくのです。
上顎奥歯の歯根(根が3本)。
下顎奥歯の歯根(根が2本)。
つまり、同じ5mmの歯周ポケットでも前歯と奥歯では危険度が違うのです。
私は、基本的には奥歯の歯周病治療を優先します。また、歯周外科治療も奥歯は特に重要です。前歯はスケーリング・ルートプレーニングのみで治癒することも多いですが、奥歯はフラップ手術などの歯周外科を行うことも多いのです。
歯間ブラシ、歯ブラシも前歯は簡単にブラッシングできますが、奥歯は困難です。困難な奥歯からブラッシングをするようにお勧めします!
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院
113.痩せた歯茎の移植手術(根面被覆)
今回は歯茎の移植手術についてです。
痩せてしまった歯茎が適切なブラッシングで回復することもありますが、角化歯肉(動かない歯茎)が少ない場合は外科手術も選択肢の一つといえます。
歯茎が痩せていても患者さん本人が気にならなかったり進行しなければ、経過観察で十分です。
①歯茎の痩せがどうしても気になる。
②冷たいものがしみる。
このような訴えがあった場合に、歯茎の移植を検討します。
今回は患者さんの希望で歯茎の移植手術を行うことになりました。
写真の青とオレンジの矢印部分の歯茎が痩せています。このような場合、歯科用樹脂(白い詰め物)を詰めても歯茎が薄い場合、また歯茎が痩せてしまって歯をどんどん削らなければならなくなります。それならば、歯茎をしっかり作って、痩せないようにした方が良いと私は考えています。そうすれば、歯を削る必要もありません。
・手術中の写真です。
口蓋(上顎の裏)から歯茎を採取し、挟み込んで移植しました。口蓋部分はテルダーミス(コラーゲン)を移植し、傷口が早く治るようにしています。絆創膏のようなものです。
・術後2週です。
オレンジ部分は、移植した歯肉がはみ出している部分が白く壊死しているように見えます。
・術後1ヶ月です。
一時的に術前より歯茎が下がります。しかし、歯茎の厚みは確保できています。
・術後4ヶ月です。
歯茎が回復してきました。

・術後1年3ヶ月です。
完全に歯茎が回復しました。
・術前術後の比較です。
術前術後のラインの比較で痩せた歯茎が回復しているのが分ります。見えていた根の部分が完全に歯茎で覆われました。また、歯茎の厚みが獲得されました。
歯茎は角化歯肉幅、厚みが確保されれば「クリーピング」といって後から経時的に歯肉が被って回復してくることがよく見られます。
歯茎や歯槽骨は環境が整えば再生することがあります。私たちは、その環境を整え、患者さんは細菌数を減らすために「歯間ブラシ」「フロス」「歯ブラシ」をきちんと行っていただく必要があり、術者と患者さんが協力していくことが何より重要です。
歯周病、歯茎の痩せが気になる方はご相談ください。
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