月別アーカイブ: 4月 2015

115.歯周病を増悪する頬小帯

今回は頬小帯切除術のご紹介となります。

電話でのお問い合わせで、ブログに紹介している手術は他の大きな病院で行うのかと聞かれますが、全て当院で行っています。腫瘍や骨折など大きな手術は行えませんが、歯周外科療法、歯の移植手術、インプラントなどは当院で十分行うことが可能です。

下写真をご覧ください。仮歯を装着している部分の歯茎ですが、頬小帯というスジがあり、歯周ポケットを深くしている上に、被せ物(金属冠)の型も採りにくい状態となっています。


そこで、まずその頬小帯を下方に移動させ縫合させました。(下写真)


創面が露出した部分に「テルダーミス」というコラーゲンが材料を移植しました(下写真)。いつもは、上顎から遊離歯肉を移植するのですが、今回は手術部位を1ヶ所にしたいためコラーゲンを利用しました。遊離歯肉移植を行うよりは付着歯肉幅は得られないことが考えられますが、手術部位が1ヶ所のため簡易的に行うことが出来ます。


術後2週間です(下写真)。頬小帯が下方に移動することができ、経過良好です。


 

まだ仮歯のままで経過観察が必要ですが、術後1ヶ月を目安に歯肉の状態が安定した後に型採りを行う予定です。小帯が切除できたことで、ブラッシングも行いやすくなりました。

この手術もそうですが、ほとんどの歯周外科は保険診療で行うことが可能です。またご相談ください。

 


日本歯周病学会・歯周病専門医

渡辺歯科医院

114.前歯と奥歯の歯周ポケットは危険度が違う!

今回は前歯と奥歯の歯周ポケットの危険度の違いの説明になります。

歯周ポケット検査の模式図です。プロービングデプス(歯と歯肉の境目の隙間深さ)5mm以上あると危険といえます。


 

このプローブ(下写真)で測定します。1mm毎にメモリが付いていて5mm毎に太いメモリになっています。

前歯で5mmの深さがある場合です。


 

次に奥歯で5mmの深さがある場合です。奥歯では5mm以上歯周ポケットが形成されている場合、根と根の間まで歯周病が感染していることが多いのです。この根と根の間を「根分岐部」といい、ここまで歯周病が進行した場合は「根分岐部病変」といいます。


 

前歯は1本しか根がありませんが、下写真のように上顎の奥歯では根が3本、下顎の奥歯では根が2本あります。一度歯周病に感染すると、奥歯では根が複数ありますので、細菌の除去、歯と歯肉の再付着が達成しにくいため治りにくのです。

上顎奥歯の歯根(根が3本)。


下顎奥歯の歯根(根が2本)。


 

つまり、同じ5mmの歯周ポケットでも前歯と奥歯では危険度が違うのです。

私は、基本的には奥歯の歯周病治療を優先します。また、歯周外科治療も奥歯は特に重要です。前歯はスケーリング・ルートプレーニングのみで治癒することも多いですが、奥歯はフラップ手術などの歯周外科を行うことも多いのです。

歯間ブラシ、歯ブラシも前歯は簡単にブラッシングできますが、奥歯は困難です。困難な奥歯からブラッシングをするようにお勧めします!

 


日本歯周病学会 歯周病専門医

渡辺歯科医院