月別アーカイブ: 3月 2015
113.痩せた歯茎の移植手術(根面被覆)
今回は歯茎の移植手術についてです。
痩せてしまった歯茎が適切なブラッシングで回復することもありますが、角化歯肉(動かない歯茎)が少ない場合は外科手術も選択肢の一つといえます。
歯茎が痩せていても患者さん本人が気にならなかったり進行しなければ、経過観察で十分です。
①歯茎の痩せがどうしても気になる。
②冷たいものがしみる。
このような訴えがあった場合に、歯茎の移植を検討します。
今回は患者さんの希望で歯茎の移植手術を行うことになりました。
写真の青とオレンジの矢印部分の歯茎が痩せています。このような場合、歯科用樹脂(白い詰め物)を詰めても歯茎が薄い場合、また歯茎が痩せてしまって歯をどんどん削らなければならなくなります。それならば、歯茎をしっかり作って、痩せないようにした方が良いと私は考えています。そうすれば、歯を削る必要もありません。
・手術中の写真です。
口蓋(上顎の裏)から歯茎を採取し、挟み込んで移植しました。口蓋部分はテルダーミス(コラーゲン)を移植し、傷口が早く治るようにしています。絆創膏のようなものです。
・術後2週です。
オレンジ部分は、移植した歯肉がはみ出している部分が白く壊死しているように見えます。
・術後1ヶ月です。
一時的に術前より歯茎が下がります。しかし、歯茎の厚みは確保できています。
・術後4ヶ月です。
歯茎が回復してきました。
・術後1年3ヶ月です。
完全に歯茎が回復しました。
・術前術後の比較です。
術前術後のラインの比較で痩せた歯茎が回復しているのが分ります。見えていた根の部分が完全に歯茎で覆われました。また、歯茎の厚みが獲得されました。
歯茎は角化歯肉幅、厚みが確保されれば「クリーピング」といって後から経時的に歯肉が被って回復してくることがよく見られます。
歯茎や歯槽骨は環境が整えば再生することがあります。私たちは、その環境を整え、患者さんは細菌数を減らすために「歯間ブラシ」「フロス」「歯ブラシ」をきちんと行っていただく必要があり、術者と患者さんが協力していくことが何より重要です。
歯周病、歯茎の痩せが気になる方はご相談ください。
渡辺歯科医院
日本歯周病学会 歯周病専門医
111.親知らずの移植
今回は親知らずの移植手術です。
まず、緑の×の歯は重度の歯周病で根の先まで骨吸収があり抜歯となりました。
オレンジの×の歯は、根が2本ありますがそのうちの1本が歯根破折(根が折れている)しています。そのため保存することができず抜歯予定となりました。
そこで、青○の親知らずをオレンジの×の歯の部分へ移植する計画としました。親知らずの移植は現在、保存不可能な歯を抜歯してから3か月以内であれば保険診療で行うことができます。
この青○の親知らずは、噛み合わせている歯(上の歯)が無いため、このままこの位置にいるよりは、反対側の噛み合わせに参加してもらった方が活躍することができます。
次は術中の写真です。
親知らずを抜歯し、反対側へ移植しました。
そして術後の写真です。
その後、根管治療(歯の根の中の治療)を行い、土台を入れて、冠を被せました。
歯の移植手術は歯周病治療を行って行く上でとても有効的な方法です。成功すればインプラント治療より圧倒的に予知性が高い方法と考えています。
富山県には歯科大学附属病院がありませんが、私は専門医を取得している以上、歯周病専門治療、補綴治療(咬みあわせや入れ歯)は大学病院で行ってきた診療スタイルと同じように行っています。
歯周病に関する専門的な治療を希望の方はご相談ください。
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院