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118.角化歯肉(付着歯肉)の重要性

5/29に神奈川歯科大学同窓会富山県支部にて歯周病について発表させていただきました。その内容を数回に渡ってご紹介いたします。

「付着歯肉は必要か?」というタイトルです。

 

少し難しい話になります。このブログにてよく登場する「動かない歯茎」と「動く歯茎」についてのお話です。「動かない歯茎」のことを「付着歯肉」といいます。

歯の周囲には「動かない歯茎」が必要最低限あった方が、歯周組織は安定しやすいことが多いと私は考えています。

左下写真をヨードで染色すると右下写真になります。


色が淡い部分と濃い部分に分けられます。

淡い部分が角化歯肉、濃い部分が歯槽粘膜といいます。

それぞれの特徴は、角化歯肉は上皮部分に角質層を有し、歯槽粘膜は上皮部分に角質層がありません。


上皮下の結合組織(上皮の下にある土台となる組織)は、角化歯肉はコラーゲン線維を有した緻密な結合組織、歯槽粘膜は弾性線維を有した疎性結合組織になります。簡単にいえば、角化歯肉は表層が硬く動かない、歯槽粘膜は表層が硬くなく動くという特徴があります。


 

現在角化歯肉の有無による影響について見解が分かれており、必要または不必要で様々な諸説があります。

1972年に発表されたLang and Löeの論文では、2mmの角化歯肉(そのうち1ミリの付着歯肉)が存在すれば、歯周組織の80%は健康が維持されたと報告しました。

The relationship between the width of keratinized gingiva and gingival health.

J Periodontol. 1972 Oct;43(10):623-7.

 

角化歯肉(付着歯肉)が無くても歯周組織の健康が維持される場合もありますが、角化歯肉が必要最低限あった方が有利な場面も多いのです。

 

症例です。

下の写真をご覧ください。

①が側面。②が咬合面です。そして③がヨードで染色した状態となります。オレンジの点線が動かない歯茎と動く歯茎の境界線になります。


 

下写真の枠で囲んだ部分に角化歯肉を移植する計画としました。


 

歯がない部分より角化歯肉を採取して移植した様子です。


 

術前術後の比較写真です。

下写真です。点線の部分が動かない歯茎と動く歯茎の境界線になりますので、術前と術後で比較すると「動かない歯茎」を増やすことが出来ました。


 

この症例では、歯と歯の間(左上7近心)に深い歯周ポケットが存在したため、どうしても角化歯肉を獲得する必要がありました。少し難しい話ですが、歯周ポケットを減らすためには(一度歯周病で剥がれた歯茎を再付着させるためには)角化歯肉がどうしても必要になる場合があります。

このケースでは、遊離歯肉移植術を行い角化歯肉を得た後に、フラップ手術を行って歯周ポケットの改善を図りました。

歯周外科療法後、ブリッジを装着してもブリッジ周囲に動かない歯茎が十分にあるために術後のブラッシング(歯ブラシと歯間ブラシ)も行いやすい状態になっています。

こんな論文もあります。

James E. Kennedyらが発表した論文です。遊離歯肉移植術を行ったグループと行わなかったグループで、6年後に歯周組織の状態を評価しています。メインテナンスにきちんと患者さんが来られる場合は、どちらも問題はなかったが、メインテナンスに来られなくなったグループでは遊離歯肉移植術を行わなかったグループで有意に歯肉退縮(歯茎の痩せ)が見られたと報告しています。

A longitudinal evaluation of varying widths of attached gingiva

J Clin Periodontol. 1985 Sep;12(8):667-75.

 

角化歯肉は「無いよりはあったほうが安心」といえるかもしれません。いつも考えることですが、今は良くても高齢になると歯間ブラシや歯ブラシによるブラッシングも困難になります。出来るだけ有利な状況を早いうちに作れるものであれば作った方がメインテナンスも行いやすいし、トラブルが起きた時の対応も簡単に済みます。

当医院は祖父の代から父、私と3代に亘って歯科医です。そのさらに先代は内科・産婦人科だったそうです。私が現在、診療させていただいている患者さんには、「ここで産まれた」という方もいらっしゃいます。要は、4代に亘って1人の患者さんの健康を管理させていただいているわけです。言い換えれば、1人の歯科医師がその患者さんの人生に関われる時間は短いのです。到底、その患者さんの一生を一人で診察することはできません。

例えば、インプラント治療について考えます。インプラント治療は私は現在40歳ですから、25歳の患者さんにインプラント治療を行った場合、私がメインテナンスできるのは私が現役で75歳まで歯科医でいられたとしても(現在父親は69歳でまだ現役で入れ歯担当してくれています)、その患者さんの60歳までしか診療できません。そのあとは、他の先生にお願いすることになります。

インプラントはメーカーも数多くあり、医院によって使用するメーカーが違いますのでメインテナンスも他メーカーのインプラントを使用されている場合は困難です。ですから、インプラント治療は予後をどのくらい追えるかが重要となると考えています。当然、歯周病が進行している患者さんも、歯周病がある程度治ってからでなければインプラント治療は行えません。それは、インプラントも歯周病菌に感染するからなのです。

私は、インプラント希望の患者さんでもブラッシングを適切に行えない方、または行っていただけない方はインプラントをお断りして、できるだけ入れ歯(ブリッジが行えれば、ブリッジが第一選択。)を勧めます。結局、インプラントも細菌感染してしまっては、後から余計に治療が大変になってしまうからです。患者さんも高額な治療費を払って、さらに噛めなくなることも考えられます。

歯科治療は、出来るだけメインテナンスしやすい環境を早めに整えておくことと、将来を見据えた治療計画をLife Styleにあわせて計画をたてることが重要であると考えています。

 

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