日本歯周病学会 歯周病専門医

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入れ歯(義歯)

総入れ歯が吸着する条件とは

上の入れ歯が落ちてきたり、下の入れ歯が浮き上がったりしてお困りの方がいらっしゃると思います。
入れ歯が適切な形をしているか、きちんと顎堤(土手)に正しい圧力で接しているかが重要になります。ウーリッヒ総義歯学では、入れ歯の周りの部分(閉鎖維持)と中の部分(基礎維持)を分けて考えています。

入れ歯を吸着させるためには、吸盤と同じ現象をお口の中で再現すればよいのです。それには、唾液の力(凝集力、付着力)やそれに伴う毛細管現象がとても重要になります。また、型の取り方も重要になります。積極的に圧力をかけた方がいい部位、あまり圧力をかけない方がいい部位などがあります。

吸着因子

基礎維持

1. 凝集力
2. 付着力(粘液性>漿液性)
3. 毛細管現象
4. 粘弾性
5. きめ

閉鎖維持

1. 粘弾性→真空効果(陰圧にするには)
2. 義歯周囲軟組織(維持のために利用できる筋肉、軟組織)
3. 義歯研磨面の形態

基礎維持と閉鎖維持

吸着阻害因子

1. 維持に対して拮抗する筋力
2. 汚れ(デンチャープラーク)

誰でも、うまく型をとれば吸着するのか?
もちろん最大限、顎堤(土手)の状態似合わせて型を取る圧力をコントロールしますが、顎堤(土手)の状態が吸着成功の鍵となります。

柔らかい吸盤と固い吸盤では、どちらが上手く空気が抜けてガラスに吸着するでしょうか。柔らかい吸盤の方が、ガラスにフィットしやすく空気が抜けて真空状態をつくりやすいのです。柔らかい顎堤(土手)の方が、空気が抜けやすく吸着しやすいといえます。固い顎堤(土手)の場合、吸着が難しい場合(面積にもよる)もあります。

また、顎堤(土手)自体のキメの細かさも重要です。窓ガラスと黒板では、吸盤は窓ガラスには吸着しますが、黒板にはしません。それは、キメの細かさになります。顎堤(土手)もキメが細かい粘膜の方は吸着しやすいですが、荒い場合は吸着しにくいといえます。

そして、一番重要なのが、顎堤(土手)の粘弾性体様の性質になります。「粘弾性」とは、「弾性」と「粘性」という二つの性質の中間の性質です。力を加えて弾かれてしまう弾力のある顎堤(土手)の場合は吸着しにくく、力を加えた時に抵抗せずにゆっくり歪んでくれる顎堤(土手)は上手く空気が抜けて吸着しやすいのです。来院されて、顎堤(土手)の部分を触診して、吸着が期待できるかどうかをある程度診断します。吸着しにくい顎堤(土手)と診断した場合は、型のとり方、噛み合わせの与え方で工夫していきます。

また、唇の緊張状態など、入れ歯を外そうとする筋力が強い場合は外れやすくなります。
そのため、逆に、周りの筋力を利用して吸着するように入れ歯の形を決めていきます。

下の入れ歯も、顎堤(土手)の状態にはよりますが、吸着は可能です。ものすごく吸着する場合もありますし、土手が硬い方は吸着が困難な場合があります。個人差がとても大きいのです。先生に作ってもらった入れ歯がよく吸い付いて外れないと宣伝されても、個人差がありますので期待して来院されてもどうしても吸着が難しい場合があります。それは、吸着因子に個人差があるからなのです。この患者さんには「名医」でも、あの患者さんには「迷医」になってしまいます。診査がとても重要であるといえます。

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