月別アーカイブ: 3月 2018

186.歯周病の検査

市の歯周組織検査で来院される方がいらっしゃいます。

なぜ歯周病検査が必要か。歯を失う最大の原因は「歯周病」です。歯周病は目立った症状がなく進行してしまいます。そのため、今まで虫歯になったことがなく、歯医者には年十年も行ってないという「歯に自信がある人」も知らないうちに歯周病に罹患いている可能性があります。

歯周病も虫歯もプラークが原因です。そのプラークの中は細菌なわけですが、その中に歯周病菌がいなくて虫歯菌しかいなければ「歯周病」にはなりません。逆に、歯周病菌が多く存在し、虫歯菌がいなければ虫歯にはなりません。

虫歯も歯周病も各々それぞれの疾患を引き起こす細菌の種類が違うのです。ですから、今まで虫歯になったことがない人も「歯周病」になる可能性があるのです。

市の歯周病検査では、「歯周ポケットの深さ」を測定します。詳しく検査するにはレントゲン撮影が必要ですが、簡易的に行うには歯周ポケットの検査でもある程度歯周病の進行具合を調べることは可能です。以下シェーマ。


 

1~3mmは青信号、4mmは黄色信号、5mm以上は赤信号になります。歯周病はほとんどが「歯と歯の間」から始まります。そのため、歯周ポケットは歯の中央だけが深くなることは、ほとんどありません。歯の中央だけ歯周ポケットの測定が深い場合、歯が破折している可能性が高いです。

この例でも深い場所もあれば、浅い場所もあります。1本の歯に対して6点で測定するのが正しい測定法で、歯の中央値だけ測定しても意味がありません。

市の歯周病検診も受け付けております。また来院されたら詳しく説明致します。

 


日本歯周病学会 歯周病専門医

渡辺歯科医院

185.歯周外科療法(歯周病の外科手術)前に必要な歯肉とは?

今回は少し難しい内容です。

このblogは一般の患者さん、医療関係者、歯科医の先生も見てくださっているようで質問を受けることもあります。今回は、一般の患者さんには難しい内容になります。

歯周病学会で発表した内容です。写真のように示した部位に6mmの歯周ポケットが認められます。歯周基本治療が終了し、歯周外科療法へ移行する予定となりました。


 

しかしながら、角化歯肉(付着歯肉)が不足しています。角化歯肉とは、上皮が角化しており結合組織にコラーゲン線維を含む歯茎のことです。このコラーゲン線維がなければ、結合組織性付着は起こりえないのです。

簡単にいえば、角化歯肉は「動かない歯茎」のことです。「動かない歯茎」=「角化歯肉」、「動く歯茎」=「歯槽粘膜」といいます。「歯槽粘膜」は動くため、もし「角化歯肉」が不足していて、「歯槽粘膜」しかなければ、「フラップ手術(歯周ポケットを改善するための手術)」を行おうと思ってもできないのです。

そのため、「角化歯肉」が不足している場合、フラップ手術を行う前に前処置として「遊離歯肉移植術」のような角化歯肉幅を増やす手術を行う必要があります。

下写真の遊離歯肉移植術の術後写真になります。「動かない歯茎」がしっかりできています。


 

しかし、この「遊離歯肉移植術」は、「裂開状骨欠損」の場合は不適応になり、「骨内欠損」の場合は適応となります。「遊離歯肉移植術」は口蓋歯肉より採取し、受容側の「骨膜結合組織床」に移植するからです。つまり、表層に骨がなければ遊離歯肉の移植は行えないのです。(以下のシェーマ)


 

歯周外科療法を行う場合、単に歯周ポケットがあるから行えるのではなく、前準備としておこなう外科療法が必要な場合もあります。

この症例は遊離歯肉移植術後、角化歯肉の獲得後にフラップ手術を行う予定でしたが、角化歯肉により歯周組織の環境が整ったため、フラップ手術を行うことなく歯周ポケットが改善しました。

 

歯周病専門治療をご希望の方、また当院にご相談ください。

 

日本歯周病学会 歯周病専門医

渡辺歯科医院

富山県小矢部市津沢796-4

 

184.歯周病の再生治療

歯周病の再生療法のお話です。

歯周病治療には外科治療もあります。歯周基本治療のみで改善が得られなかった場合、もっと積極的に歯周組織の再生を狙っていく場合など「歯周外科療法」という方法があります。

今回はGTR法といってコラーゲン膜を使用した場合と、自家骨移植といってご自分の歯槽骨を採取して骨が吸収した部位に移植する方法の紹介です。

左写真が術前。そして真ん中の写真が歯肉を剥離した写真です。この点線部が歯周病によって骨吸収が起こった部位です。左写真は、骨吸収が起きた部分にティッシュガイドというコラーゲン膜を置き固定した写真です。

 

専門的な説明をすると、通常コラーゲン膜を置かずに剥離した歯肉を元の位置に戻すと上皮が骨欠損部に入り込み結合組織性付着や骨再生が期待しにくくなります。コラーゲン膜は上皮の深部増殖を防ぐための遮断膜になり、時間とともに生体に吸収されます。

次に自家骨移植について。自家骨移植は歯周病によって骨吸収が起きた部分に周囲の骨を採取して移植する方法です。

左写真の点線部分に骨吸収が見られます。そこに採取した自家骨(下写真)を右写真(点線)に移植しました。


 

この移植した骨自体も歯槽骨となる可能性がありますが、GTR法と同じように上皮を遮断し、歯根膜細胞を誘導して歯周組織を再生する目的があります。

歯周病の専門的な治療をご希望な方は、このような特殊な外科療法もできます。

またご相談ください。

 

日本歯周病学会 歯周病専門医

日本補綴歯科学会 専門医

渡辺歯科医院