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2.歯周病症例(主訴:前歯の開きが気になる。)

52歳女性、上の前歯が開いていることが気になり来院されました。前歯の間が開き、歯肉が腫れています。エックス線撮影、歯周ポケットの検査を行っています。全体的に5mm以上の歯周ポケットが認められます。このような場合、開いてしまった歯を削って冠を被せてしまえば、解決するのでしょうか?それでは解決しません。見た目の問題を解決しても、歯肉の中の根が汚染されていれば、冠を被せて一時的に見た目が回復しても、また開いてきてしまいます。そこで「治療計画」を立案します。ホームページでも示したように歯周病治療に限らず、歯科治療は「治療計画」がとても重要になります。その治療計画は「歯周病治療」をベースとしたものでなければならないと私は考えています。

では、この症例の場合の「治療計画」はどうすればいいのでしょうか?

まずは、歯周基本治療である炎症性因子のコントロールを行います。患者さんに1.歯間ブラシ、2.歯ブラシ、3.ワンタフトブラシにてブラッシング指導、スケーリング(歯石をとること)、スケーリング・ルートプレーニング(歯肉の中の根に付いている歯石をとり、汚染した根をきれいにすること)、不良な被せものを外して仮の歯の製作、左上の一番奥の歯は保存できないため抜歯。その後、再評価をします。歯周病治療では、この「再評価」がとても重要になります。「再評価」は、再度、歯周ポケット検査、歯の動揺、噛み合わせの確認を行います。この時点で歯周ポケットが改善されれば、歯周病治療は経過をみながら、被せものの治療へと移行します。しかしながら、特に奥歯に関しては歯周基本治療だけでは歯周ポケットは改善しにくいのです。「歯周基本治療」は「原因除去療法」といいます。歯の表面のプラークの除去、歯肉の中の歯肉縁下歯石の除去、無理な噛み合わせの調整により歯周病の原因および悪化させている原因を除去します。これで治れば一番良いのですが、まだ歯周ポケットが残っている場合は、「歯周外科処置」へ移行するのが望ましいです。この症例の場合、奥歯に関しましては歯肉剥離掻爬術を施行しました。

術後の写真と、歯周ポケット検査です。気になって来院された上の前歯の開きは改善しています。これは矯正治療を行ったわけではありません。上の前歯に関しては歯周外科処置も行っていません。患者さん自身の歯間ブラシ、歯ブラシ、ワンタフトブラシによるプラークの除去と来院されて行った「スケーリング・ルートプレーニング」により炎症を起こしていた因子が除去され、歯が自然と元の位置に戻りました。炎症は、歯をも動かしてしまうのです。炎症が改善すれば、歯の動揺が改善し、歯が自然と元の位置に戻ってくることがよくあります。歯周基本治療をきちんと行い、炎症を起こしている原因を除去することが最も重要になります。歯周ポケットも全体的に3mm以下に改善しました。

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