今回のケースの歯の移植です。
患者さんに了解を得て掲載させていただきました。
オレンジ矢印部分には大きな嚢胞(骨が感染により溶けている状態)が確認されます。患者さんは授乳中の女性のため、外科手術が困難な状況です。
根管治療(根の中の消毒)を行っていましたが、根管内からの排膿(膿がでること)が止まりません。そこで、根管を大きく拡大(根の管を拡げる)して開窓(根の先の膿が出るように空気に触れさせること)させるようにしました。
すると、時間の経過とともに嚢胞が縮小(下写真)していきます。
さらに数ヶ月後、嚢胞が縮小していきました。
そして患歯を抜歯して親知らず(下写真の青○が親知らず)を移植しました。移植後2か月が経過した写真です。
デンタルエックス線写真でも嚢胞が消失し、移植した親知らずの周囲には骨が再生しています。
被せものを装着した状態です。
今回のケースで、もし早期に患歯を抜歯して嚢胞摘出を行っていれば、その部分の骨は陥凹してしまい回復できなかった可能性もあります。患者さんが授乳中であったため、外科処置を避けて開窓を行った結果、患歯を保存しつつ嚢胞を縮小させることに成功しました。
嚢胞が縮小してしまえば、嚢胞摘出術など大きな外科処置は行う必要がなく、普通抜歯と同じ程度の外科治療で済みます。
患者さんの授乳期間が終了したところで、親知らずの移植に踏み切りました。現在のところ、良好に経過しています。
歯牙移植は100%の成功率ではありません。上手くいかないケースも経験しています。しかしながら、お口の中で活用していない親知らずなどの歯があれば、他の場所へ移植して活躍してもらった方が有意義であると考えています。私はインプラント治療も行ってはいますが、自分の歯で咬めるのに越したことはありません。
またご相談ください!
日本歯周病学会 歯周病専門医
日本補綴歯科学会 専門医
渡辺歯科医院