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199.歯茎の移植

今回は「動く歯茎(歯槽粘膜)」しかない部分に「動かない歯茎(角化歯肉)」を移植したケースです。

術前写真は金属冠の周りに「動く歯茎」しかないため、患者さん自身によるブラッシングが困難であったため、「動かない歯茎」を口蓋から移植しています。

これにより歯の周囲の歯茎は動かなくなり、ブラッシングが容易になります。

 

以前紹介した内容を下記に説明します。

「動かない歯茎」と「動く歯茎」についてのお話です。「動かない歯茎」のことを「付着歯肉」といいます。

歯の周囲には「動かない歯茎」が必要最低限あった方が、歯周組織は安定しやすいことが多いと私は考えています。

左下写真をヨードで染色すると右下写真になります。


色が淡い部分と濃い部分に分けられます。

淡い部分が角化歯肉、濃い部分が歯槽粘膜といいます。

それぞれの特徴は、角化歯肉は上皮部分に角質層を有し、歯槽粘膜は上皮部分に角質層がありません。


上皮下の結合組織(上皮の下にある土台となる組織)は、角化歯肉はコラーゲン線維を有した緻密な結合組織、歯槽粘膜は弾性線維を有した疎性結合組織になります。簡単にいえば、角化歯肉は表層が硬く動かない、歯槽粘膜は表層が硬くなく動くという特徴があります。


 

現在角化歯肉の有無による影響について見解が分かれており、必要または不必要で様々な諸説があります。

1972年に発表されたLang and Löeの論文では、2mmの角化歯肉(そのうち1ミリの付着歯肉)が存在すれば、歯周組織の80%は健康が維持されたと報告しました。

The relationship between the width of keratinized gingiva and gingival health.

J Periodontol. 1972 Oct;43(10):623-7.

 

角化歯肉(付着歯肉)が無くても歯周組織の健康が維持される場合もありますが、角化歯肉が必要最低限あった方が有利な場面も多いのです。

こんな論文もあります。

James E. Kennedyらが発表した論文です。遊離歯肉移植術を行ったグループと行わなかったグループで、6年後に歯周組織の状態を評価しています。メインテナンスにきちんと患者さんが来られる場合は、どちらも問題はなかったが、メインテナンスに来られなくなったグループでは遊離歯肉移植術を行わなかったグループで有意に歯肉退縮(歯茎の痩せ)が見られたと報告しています。

A longitudinal evaluation of varying widths of attached gingiva

J Clin Periodontol. 1985 Sep;12(8):667-75.

 

角化歯肉は「無いよりはあったほうが安心」といえるかもしれません。いつも考えることですが、今は良くても高齢になると歯間ブラシや歯ブラシによるブラッシングも困難になります。出来るだけ有利な状況を早いうちに作れるものであれば作った方がメインテナンスも行いやすいし、トラブルが起きた時の対応も簡単に済みます。

歯茎の移植は保険診療で行えます。

歯茎のトラブルがあればご相談ください。

 

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