今回も歯肉の移植手術に関してのテーマになります。
そもそも健康な歯と歯肉の関係はどういったものなのでしょうか。下図のようになります。
歯と歯肉の間には歯肉溝という隙間が1mmあって、その下に上皮性付着が1mm、結合組織性付着が1mm存在することで「歯と歯肉の計2mmの付着」が存在しており、この結合組織性付着が重要といわれています。
では移植した歯肉は一体どうやって治るのか?
イメージとしては、下図右のような感じになると考えられます。結合組織性付着ではなく、上皮が伸びた「長い上皮性付着」で治るといわれています。左図のような付着で治るのがベストですが、、、。実際は、長い上皮性付着で治るようです。
論文を紹介します。2001年のJournal of Periodontologyの論文です、
Histology of Connective Tissue Graft.A Case Report
ZeinaMajzoub,LucaLandi,MariaGrusovin,andGiampieroCordioli
J Periodontol 2001;72:1607-1615.
この論文は根面被覆をしたケース(24歳女性、ミラーの分類Class1上顎左右犬歯、小臼歯)。12ヶ月後に抜歯(歯肉も含めて)して組織学的に評価したものです。方法はLanger&Langer法。これによると、長い上皮性付着で治癒し、元々の結合組織性付着のようなコラーゲン線維が歯に対して垂直に入り込むのではなく、歯と平行に走行する「インプラントと歯肉の関係」のようになっていると報告しています。
長い上皮性付着は弱いのか?また、長い経過を追っていくと、結合組織性付着に変わっていくのか?それに関しては分りませんが、実際私が最も長く予後が追えている症例(下症例の上写真)は7年経過していますが、今のところ歯肉退縮の再発はなく経過良好です。この症例の現在は、「長い上皮性付着?」、「結合組織性付着?」、もしくは「歯槽骨再生?」それは分りませんが、、、。
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院