月別アーカイブ: 11月 2011

10.歯周外科(歯肉剥離掻爬術)

歯周病の外科治療をご紹介します。最も代表的なのがフラップオペレーション(歯肉剥離掻爬術)です。歯周基本治療後に再評価を行い、深い歯周ポケットが残存している場合に行います。

歯周ポケットが深く、歯周病が進行した場合におこなう保険適応の処置です。歯肉を剥離し、見える状態でスケーリング・ルートプレーニング、歯肉の汚れた組織の除去、歯槽骨の整形を行い、歯肉を元の状態に戻して縫合します。

抜歯する訳ではありません。抜歯は、骨の中から歯を引っこ抜きますが、この処置は歯と歯肉を掃除して元に戻すだけなので、何も怖くありません。抜歯より体に対しては優しい処置になります。処置が終わった後に歯周パックをして保護します。抗生剤、痛み止めの薬をお飲みいただき、7~10日後に糸をとって消毒します。

渡辺歯科医院

日本歯周病学会 歯周病専門医

9.歯茎から膿が出る原因

歯茎から膿が出ている場合、一般的には①、②、③のことが考えられます。その他の原因もありますので精査が必要です。

歯周病が進行して、深い歯周ポケットから感染が拡大して膿が出ています。

治療→歯周ポケットから膿を出して、急性症状が消失してから歯周病治療を開始します。

②歯髄(神経の入っている管)から感染が拡大して膿が出ています。

治療→根の管から膿を出します。膿が出きらない場合は、歯肉を切開して、応急的に膿を出します。急性症状が消失後に、根の管の中の消毒を行います。

③歯の根が折れた部分から感染が拡大して膿が出ています。

治療→歯肉から膿を出して、消毒します。急性症状が消えたら、折れた根を取り除きます。その後、抜歯になることが多いです。抜歯後は、主にブリッジ、インプラント、入れ歯を入れます。

渡辺歯科医院

日本歯周病学会 歯周病専門医

 

 

8.歯周病症例(歯周‐矯正‐補綴治療)

歯周病治療で最も重要なのは、「治療計画」です。お口の中全体を把握してから診療を開始します。そして、「再評価」も重要です。行ってきた治療に対する評価(レントゲン、歯周ポケット検査、噛み合わせの診査)を客観的に行い、今後の治療の軌道修正を考える必要があるからです。

49歳女性、左下奥歯の痛みで来院されました。口腔内写真を示します。

口腔内写真では、歯間乳頭部(歯と歯の間)を中心に顕著な炎症が認められます。エックス線所見では、左の上下奥歯を中心に骨吸収が進んでいます。歯周組織検査でも、左の上下奥歯に深い歯周ポケット(赤の数字は出血を示す)が認められます。

 

 

 

治療計画です。

まずは、主訴に対して治療を開始します。左下奥歯の感染根管治療(根の中の治療)を行いました。ブラッシング指導、スケーリング・ルートプレーニングを行っています。その後、再評価(歯周ポケットの検査・噛み合わせの確認)を行い、矯正治療に移行しました。その後、歯周外科処置を行っています。

左下奥歯に遊離歯肉移植術、左右奥歯を中心に歯肉剥離掻爬術(エックス線写真の○の部分)を行いました。

遊離歯肉移植術(保険適応)は、付着歯肉(歯の周りを支える動かない歯茎)が少ない場合に行う処置です。インプラントの前処置でも重要な治療です。インプラントでは、角化組織が特に重要となります。

 

 

術後の口腔内写真、エックス線写真、歯周組織検査(赤の数字は出血を示す)です。炎症も消退し、健康な歯周組織を取り戻すことができました。エックス線所見においても、歯槽硬線および歯根膜腔の明瞭化が確認できます。

左下の奥歯と左右上奥歯に歯周ポケットの再発が認められましたが、その後は経過良好です。

歯周病治療は、「治療計画」と「再評価」が重要になります。治療効果があったのかどうなのか必ず評価が必要だからです。そして、今後の定期診査でどのようなことを行っていけばいいのかを考える必要があります。

渡辺歯科医院

日本歯周病学会 歯周病専門医

 

 

7.ブラッシング

歯周病治療の基本はブラッシングになります。歯周病の原因であるプラーク(歯垢)のほとんどは細菌とその代謝物から成り、食べカスではありません。プラークをできるだけ除去していただくことが何よりも歯周病の治療になります。テレビのCMのように歯周ポケットの中まで磨く必要はありません。歯周ポケットの中の炎症のコントロールは、歯科医院の仕事になります。

 

ブラッシングツールをご紹介。

歯周病の程度、患者さんのテクニックに合わせて選ぶ必要があります。歯間ブラシは必須です。ワンタフトブラシは奥歯や、前歯の裏に有効です。スーパーフロスはブリッジの清掃に使います。

渡辺歯科医院

日本歯周病学会 歯周病専門医

 

6.歯周病症例(歯磨きしにくい被せもの)

57歳女性の方です。右上がしみるとのことで来院されました。歯肉の発赤、腫脹が見れれます。歯周病検査の結果、数か所に深い歯周ポケットが認められました。歯肉に炎症を起こしているのは、プラークです。プラークは、ほとんどが細菌とその代謝産物になりますので、プラークが蓄積すると歯肉に炎症を起こします。本症例の場合、プラークが付着しやすい被せものが多く入っています。患者さん本人がいくら歯磨きしようと思っても、磨きにくい被せものや詰め物が入ってることでプラークコントロールが妨げられ、歯周病が悪化することがあります。

治療計画です。被せものをいきなり全て外すことはできないため、被せものの形態を修正してブラッシングを行いやすくします。そして、通常通り、スケーリング・ルートプレーニングを行いました。再評価後に右上奥歯と、右下奥歯の深い歯周ポケットに対して歯肉剥離掻爬術を行いました。その後、ブラッシングしやすい形態の被せものを入れて、入れ歯を製作しました。

術後の写真と歯周組織検査です。

 

プラークコントロールをしやすい被せものによって歯周病は改善しやすくなります。

渡辺歯科医院

日本歯周病学会 歯周病専門医