歯周病治療で最も重要なのは、「治療計画」です。お口の中全体を把握してから診療を開始します。そして、「再評価」も重要です。行ってきた治療に対する評価(レントゲン、歯周ポケット検査、噛み合わせの診査)を客観的に行い、今後の治療の軌道修正を考える必要があるからです。
49歳女性、左下奥歯の痛みで来院されました。口腔内写真を示します。
口腔内写真では、歯間乳頭部(歯と歯の間)を中心に顕著な炎症が認められます。エックス線所見では、左の上下奥歯を中心に骨吸収が進んでいます。歯周組織検査でも、左の上下奥歯に深い歯周ポケット(赤の数字は出血を示す)が認められます。
治療計画です。
まずは、主訴に対して治療を開始します。左下奥歯の感染根管治療(根の中の治療)を行いました。ブラッシング指導、スケーリング・ルートプレーニングを行っています。その後、再評価(歯周ポケットの検査・噛み合わせの確認)を行い、矯正治療に移行しました。その後、歯周外科処置を行っています。
左下奥歯に遊離歯肉移植術、左右奥歯を中心に歯肉剥離掻爬術(エックス線写真の○の部分)を行いました。
遊離歯肉移植術(保険適応)は、付着歯肉(歯の周りを支える動かない歯茎)が少ない場合に行う処置です。インプラントの前処置でも重要な治療です。インプラントでは、角化組織が特に重要となります。
術後の口腔内写真、エックス線写真、歯周組織検査(赤の数字は出血を示す)です。炎症も消退し、健康な歯周組織を取り戻すことができました。エックス線所見においても、歯槽硬線および歯根膜腔の明瞭化が確認できます。
左下の奥歯と左右上奥歯に歯周ポケットの再発が認められましたが、その後は経過良好です。
歯周病治療は、「治療計画」と「再評価」が重要になります。治療効果があったのかどうなのか必ず評価が必要だからです。そして、今後の定期診査でどのようなことを行っていけばいいのかを考える必要があります。
渡辺歯科医院
日本歯周病学会 歯周病専門医