今回はGTR法の紹介です。
下写真は術前です。オレンジ矢印部分に6mmの歯周ポケットが存在します。
実際に歯肉を剥離したのが下写真です。オレンジ部分に骨吸収(歯周病で骨が喪失した部分)が確認できます。
通常のフラップ手術は、骨吸収部分の清掃(具体的には不良肉芽の除去とルートプレーニング)をして歯肉を元の状態に戻します。
しかしながら、そのまま歯肉を元の状態にもどしてしまうと、上皮部分(歯肉表層部分)の治癒力が早く骨欠損部分に入り込んでしまい歯肉繊維や歯槽骨が再生できない環境になってしまいます。
そこで、GTR法が開発されました。『GTR法』とは、『Guided Tissue Regeneration technique』の略で、日本語では、『歯周組織再生誘導法』と言います。
上皮部分が骨欠損部分に入り込まないように遮断する膜を設置して、その間に歯肉線維や歯槽骨を作る細胞を膜の下に呼び込み再生させるというものです。
下写真は骨欠損部分にGTR膜(遮断膜)を設置したところです。骨欠損部分が遮断膜で覆われ、歯肉が入り込むのを防ぎます。膜は白色ですが、血液を含んで赤く染まっています。
私は、何種類かのGTR膜を使用した経験がありますが、コラーゲン膜(コーケンのティッシュガイド:現在保険適応外)が組織親和性も高く個人的な感想としてはこの材料が最も優れていると思います。
GTR膜の上に元の歯肉を戻して縫合しました(下写真)。
この後は6か月間経過観察し、レントゲンや歯周ポケット検査を行って再評価します。
歯周病で骨を失っても、部分的なものであれば再生させることも可能です。またGTR法など再生外科療法と呼ばれるものを行わなくても歯周組織が再生することもあります。
歯周病治療成功の鍵は、①患者さん自身のプラークコントロールをいかに上手に行ってもらえるか、そして次が最も重要なことなんですが、②私たち歯周病治療専門家の説明を患者さんがどれだけ受け入れてくれるかが大切と考えています。
歯周病でお困りの方がいらっしゃいましたらご相談ください。
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院