今回は親知らずの再植の症例です。
再植は一度抜歯した歯を元の位置に戻すことをいいます。
下写真です。
赤矢印が親知らずで、青の歯に重なっています。そのため、青の歯は虫歯になっている状態です。
このような場合、親知らず(赤)を抜歯してしまうのが通常です。しかしながら、下の奥歯2本は神経を取ってしまっている歯です。そのためこれらの歯は、将来的に抜歯になる可能性も高いのです。この親知らず(赤矢印)を残してさえおけば移植して使えることもできますから、今すぐに親知らずを抜歯するのはもったいないですし、でも放っておいては青矢印の虫歯や歯周病が進行してしまいます。
なんとか親知らずを残したまま(移植要員として)青矢印の歯の虫歯を治療したい。
そこで、以下の図のような計画にしました。
一度親知らずを抜いて、180°回転させて元の位置に戻します。そうすることで、歯を少し浮かせた状態にでき、手前の歯との重なりを防ぎます。
術後が下写真です。
親知らずの神経処置を行ったのちに虫歯治療を行い、青矢印の歯と赤矢印の歯を連結して被せました。(※赤矢印の歯は咬みあう歯がないため出てきてしまうので連結)
こうすることで親知らずは移植要員として保存することができ、青矢印の虫歯治療も完了しました。
治療計画はいろいろ考えられますが、親知らずといえど後から「移植」することが可能です。以前のブログにて移植はご紹介させていただきました。親知らずはなんでも抜歯するのではなく保存しておけば将来的に良いこともあります。
この患者さんが他に神経を取った歯もなく、歯周病にも問題なければ今回は「再植」せず「抜歯」を選択したと思います。その患者さんの年齢、お口の中の状況にあわせて治療計画は立案すべきなのです。
日本歯周病学会 歯周病専門医
渡辺歯科医院